Arsprout Piを使ってみた① ーUECS Piからの変更点を中心にー

 UECS Piの後継であるArsprout Piのドキュメントが充実してきましたので、ようやく試してみようと思い立ちました。前回のブログで書いたようにUECS Piはもう更新されませんので、Raspberry Pi 4のような新しいハードウエアを使うためには、いずれ通らねばならない道ではあります。

手始めに今回はUECS Piの機能をどのくらい継承しているのかを比較してみたいと思います。すべて試したわけではなく、あくまでドキュメントベースの比較になります。(個人的にはお金の都合もありすべて試す予定はないです。現時点で確認済みのものは記載します)

今回の使用報告はファームウエアはarsprout-pi-1.8.2。マニュアルはユーザーガイド[基本機能編]Ver.1.8.0を使用しています。

Arsprout Piの画面例 ユーザーインターフェースが拡張されて、データ保管の要件がなければクラウドサービスがなくても満足度は高いかもしれない。

センサーの比較

表は、UECS Piと比較したものです。Arsprout Piでは継続性を考慮しながら、おそらく使用頻度の低いセンサーを廃止し新しいセンサーを取り入れているようです。
UECS PiでサポートされていたセンサーとArsprout Piでサポートしているセンサーの比較。Arsprout Piのセンサーは他にもあるので、詳しくはマニュアルを参照してください。UECS Piデバイスの欄の太字は私が使用しているセンサー。Arsprout Piの欄の太字は現時点で稼働確認したものです。

I2Cの温湿度センサーや1-Wireの温度センサーはUECS Piのセンサーを継承しながら新しいものが追加されています。

電圧/電流センサーは、Arsprout PiのV1.9.0でINA226が追加されました。Arsprout Piの機能拡張は最近頻繁に行われていて、使用する前には最新マニュアルを確認したほうがよさそうです。

CO2センサーもUECS Piのセンサーをほぼ継承しています。CDM7160はネットでは販売されていないようです。それよりもArsprout Piで新しく追加されたSCD30は日本では9千円台で売られていますが、AliExpressでは3千円台で売られていて、試してみる価値がありそうです。私が使用しているELT S-300は1万円以上の値段になりますので、代替できれば費用が節約できそうです。

pH/ECセンサー(土壌センサー)も新しいものに更新されていますが、いずれも高価なものなので、私は当面使用する予定がありません。

AD変換器はMCP3208を使用していましたが、Arsprout Piでサポートされなくなったのは残念です。MCP3424もADS1015も表面実装タイプのパッケージしかなくてハンダ付けに技術がいりそうです。ネットでは2.54mmのピンヘッダーが使える基板に実装したモジュールも売られていて、チップ本体とあまり変わらない値段で売られているので、こちらのほうが使いやすいかもしれません。MCP3208も以前は300円程度で売られていましたが、現在は日本では600円ぐらいに値上がりしていますので、切り替え時期かもしれません。

Raspberry Piカメラが使えなくなった

センサー以外で変更になったものとしてかめらがあります。Arsprout PiではRaspberry Piカメラがサポートされず、USBで接続するUVCカメラだけになりました。
価格もUVCカメラのほうが安いし、種類もたくさんあります。なによりRaspberry Piカメラはケーブルの取り回しが面倒で長さも制約があるので、USBケーブルのほうが楽ですね。この際、UVCカメラに切り替えようと思います。

LCD(液晶ディスプレイ)

LCDは、UECS PiでサポートしていたACM1602に加えてAQM1602がサポートされます。

AQM1602はACM1602の半額以下で、I2Cのクロックレートも速くなっているのでACM1602で行ったi2c_baudrateのカストマイズも不要のはずです。ところがRaspberry PiとI2C接続させるためには追加のハードウエア(I2Cバスリピータ)が必要だそうです。

<Arsprout担当からいただいた情報>
I2C液晶(AQMシリーズの液晶)をラズパイに接続しても表示されません。どのようにすればいいでしょうか?
秋月電機通商のQ/A https://akizukidenshi.com/catalog/faq/goodsfaq.aspx?goods=K-08896

AQM0802A(8文字×2行)はI2Cバスリピータが付いたキットが売られていますが、AQM1602用のキットは現時点で販売してないようです。ということはバスリピータを自作しないと接続できない。回路図は載っているので自作は可能ですが、ちょっと面倒。

ということでACM1602を継続使用することになりそうですが、i2c_baudrateのカストマイズは引き続き必要になります。UECS Piの時には/boot/config.txtに下記の指定を追加していました。
dtparam=i2c_baudrate=50000

詳細は「UECS PiにLCD(デイスプレイ)を接続する」https://blog.ezitc.dev/2022/08/uecs-pilcd.html

ところが、config.txtを変更しても2回目の再起動で定義が消えてしまうという怪現象に遭遇しました。いろいろ試したあと、Arsprout Pi担当に問い合わせたところArsprout Piのアプリケーションでconfig.txtを書き換えているとのこと。書き換え元ネタのテンプレート(/opt/scripts/config_template.txt)を変更して反映させることができました。もちろんArsprout Piはファームウエアのカストマイズはサポート外ですので、変更するときは自己責任にてお願いします。しかし、サポート範囲内でLEDを接続しようとするとACM1602のファームウエアの書き換えかAQM1602用のI2Cバスリピータを作成するかのどちらかを行わなければならないので、結構な高さのハードルですね。
下記の動画がLCDに表示したときの様子です。


UECS Piと同じLCD(ACM1602)をArsprout Piで表示させたときの様子。スクロール表示するようになって表示項目が増えたが、表示内容のカストマイズは自由度が減った。

次回は、Arsprout Piの定義の方法についての経験談を書きたいと思います。
価格情報は記事作成時点(2023年6月)の情報ですので、最新情報はご自身でご確認ください。
*「UECS Pi」、「Arsprout Pi」はアルスプラウト株式会社が提供する汎用DIY環境制御ソフトウェアです。https://www.arsprout.co.jp/products/others/uecs-pi/
https://www.arsprout.co.jp/products/arsprout-pi/
*「UECS」は農業用のセンサー機器や制御機器用の通信・動作の共通仕様です。UECS研究会が公開しています。https://www.uecs.jp/outline/outline-index

関連リンク:EzITコンサルティング www.ezitc.dev

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