Arsprout Piを使ってみた② ー構成定義を中心にUECS Piとの違いを考えるー
前回はUECS PiとArsprout Piのセンサーを中心に比較しましたが、今回は定義を作成してみてUECS Piのときと違うところを紹介します。Arsprout Piは更新が随時行われていますので、詳細は最新版のマニュアルは確認するようにお願いします。
今回の使用報告はファームウエアはarsprout-pi-1.8.2。マニュアルはユーザーガイド[基本機能編]Ver.1.8.0を使用しています。
オブジェクト指向的に整理された?
図は、Arsopout Piのマニュアルの最初のほうにあるものですが、構成定義の考え方を理解するうえで重要な図になります。最初は定義を作成するときにメニューのどこで設定するのか見当をつけるのがむつかしかったのですが、最初にこの図をよく頭に入れておけばわかりやすかったと思います。画面の左側に表示されるメニューと定義の関係がこの図に表れています。
UECS Piではセンサーの定義をする画面が1画面に集約されていましたが、Arsprout Piでは(オブジェクト指向的に)分割されています。例えばCO2センサーを定義するときには下の図のように、まず「デバイス」としてCO2センサー(ここではELT S-300)の定義をして、その次にコンポーネントとしてCO2測定値の属性を「センサー」の画面で定義します。CO2測定値には「デバイス」であるCO2センサーを「データポート」という概念で関連付けすることになります。(複雑な記述になってしまいますが、センサーというハードウエアの属性と測定値などの値の属性は別物なんだということ)
マニュアルもメニューの順番に沿って「センサー」と「デバイス」が別項目になってますので最初は少し戸惑ってしまいました。この図を理解していれば迷子にならなくてよかったかもしれません。
GPIO番号がなくなった
次にUECS Piではアクチュエーターやデジタル入力センサーとして定義していたGPIOですが、「デバイス」の「RaspberryPi GPIO」のメニューから定義します。ここで注意しないといけないのは名称として以前使っていたGPIOの番号ではなく、まさに「PIN番号」が使われています。マニュアルをよく読まないと気が付きませんので、最初はUECS PiのGPIO番号と全く違うので焦りました。しかし、UECS PiのGPIO番号はネットで出ている標準(?)のGPIO番号と違っていたので「PIN番号」に変更してわかりやすくなったと思います。(GPIO番号でラベル付けしていた配線などは変えないといけないのは面倒ですが、仕方ない)
もう一つは、番号1桁目のピンは使用できず、11番目以降のピンしか使用できないことです。UECS PiでGPIO8,9,7,15,16を使用していたら変更する必要があります。(しかしこれらのピンはI2CやUARTで使用するものなので、わざわざGPIOで重複して使わないほうがいいと思います。SDA,SCLのピン3と5はハードウエアでプルアップされててソフトウエアでプルダウンできないという制約もあり、これらは既定のインターフェース専用にしたほうが安全です。)
Raspberry Pi GPIOの定義例
自律モードの制御ルールは「ダッシュボード」から
デジタル出力を自律モードで行うための制御ルールは、UECS Piではアクチュエーターの画面で定義していましたが、Arsprout Piでは「ダッシュボード」の「汎用制御」の画面から行います。(「ダッシュボード」が表示だけの定義と先入観を持っていたので見つけるのに時間がかかった)
下の画面のように定義と同時にルールの判定状況と時系列の状況がわかります。
アクチュエーターの制御ルールの定義例
UVCカメラ
カメラの設定は「デバイス」メニューから行います。前回の記事でも紹介しましたが、Raspberry Piカメラはサポートがなく、UVCカメラのみです。
ご存じとは思いますがUVCカメラはUVC(USB Video Class)規格に対応したカメラで特別なドライバーのインストールが必要ありません。ネットショップではUVC対応が明記されたものを買いましょう。
UVCカメラの表示(上)と定義例(下)
撮影した画像は「デバイス」メニューからUVCカメラを選択すると見ることができます。UECS Piの場合はトップ画面に表示されてて画面を切り替えなくても見えていましたが、Arsprout Piではダッシュボードで表示されませんのでちょっと残念です。
その代わりクラウド連携のアップロード方法で「連続」と指定すると、撮影した画像を随時アップロードできるようになりました。UECS Piのときは、1日10回のスケジュールでアップロードする設定しかできませんでした。随時クラウドにアップロードしたデータはArsproutクラウド画面のカメラデータとして最新のものを見ることができます。(自動リフレッシュ機能がないのは残念) クラウドのデータ保管時間間隔はクラウド側のカメラ設定でできます。クラウドを使用する場合は便利になったと思います。
LCDは表示する項目だけ指定可能
LCDの表示内容は項目だけ指定できるようになりました。UECS Piでは表示形式もカストマイズできるようになっていました。LCDがスクロールするようになって情報が増えたのは良い点です。しかし、LCDにCCM表示名や区分を表示するニーズはどのくらいあるでしょうか。UECS Piのように表示形式もカストマイズできたほうがよかったと思います。LCDの設定例
ダッシュボードは定義しないと表示されない
当たり前のことではありますが、ダッシュボードは定義しないと表示されません。UECS Piではセンサーやアクチュエーター、カメラとか定義されたものは自動的に表示されていました。そのかわりアイコンが追加されるなど見やすくなったのは良かったと思います。(流行のCSSのテンプレートに似たデザインになった)
しかし、データの値やグラフ、カメラ画像を1画面で表示することはできないので、ハウスの状態を一覧で見たいのならArsproutクラウドの画面のほうが見やすいと思います。(有料にはなりますが、それが戦略)
まだほかに機能改善点はあると思いますが、とりあえず「使ってみた」経験を書きました。それからこれは推測ですが、定義変更した内容はすぐに反映されるようになったようです。UECS Piでは、定義変更したらとりあえず「ノード再起動」を行って反映していましたが、Arsprout Piでは定義を保管したらすぐに自動的に反映される場合が多いです。その点は使いやすくなったと思います。(反映タイミングは保証されていないと思いますので、変わるかもしれません)
*「UECS Pi」、「Arsprout Pi」はアルスプラウト株式会社が提供する汎用DIY環境制御ソフトウェアです。https://www.arsprout.co.jp/products/others/uecs-pi/
https://www.arsprout.co.jp/products/arsprout-pi/
*「UECS」は農業用のセンサー機器や制御機器用の通信・動作の共通仕様です。UECS研究会が公開しています。https://www.uecs.jp/outline/outline-index
関連リンク:EzITコンサルティング www.ezitc.dev
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