Raspberry Piを使った制御入門②
前回の続きです。Raspberry Piを使った自作制御ボードの説明をします。今回は安全面やキャパシティについての設計上の考慮点について書きます。
何系列制御できるか
Raspbery Pi(以下,Raspi)には電流の制約があります。1つのGPIOは16mA以下、全体で50mA以下。余裕を見て7割の32mA以下で設計しておきたいです。そのためには、GPIOからフォトリレーへの入力電力を適切にするように回路図の抵抗R1の値を決める必要があります。
抵抗R1の計算は下記のようになります。(*1)
R1 = (Vcc-Vf)/If
VccはGPIOとGND1の電圧。つまり3.3V。
Vfはフォトカプラ両端(端子1と2)にかける電圧。データシートによると推奨は1.15V。
Ifはフォトカプラ両端(端子1と2)に流す電流、つまりGPIOに流す電流。余裕をみて10mAとする。
したがって
R1 = (3.3-1.15)/0.01 = 215 Ω
近い値の抵抗器を選びます。
しかし、TLP22Aのデータシートでは、推奨動作条件のIfの最小値は5mAです。その場合R1は430Ωの計算になります。トリガLED電流(フォトリレーがオンになる電流)は3mAになってますのでまだ余裕があるはずです。実際私は別の基盤を500Ωで作成して稼働しています。Ifの値を小さくすればGPIOに流れる電流を節約できます。(ここでは特に問題になりませんが、変換効率(*2)という要素もあって出力側の電流を多く流す場合、Ifは適切な大きさで設計しないといけません)
GPIO全体の電流はIf×オンになるGPIOの数となります。このボードの設計では余裕を見て4系統にしました。Ifを5mAとしたとき4系統で最大20mAということになります。(制御ボードの大きさをコンパクトにしたほうが基板製作費が安いという理由もありました)
冒頭の基板イメージでは4つのTLP222Aを取り付けられます。これは4つしか機器が制御できないということではなくて、4つの系統を別々に制御できるということです。ボードの先に接続する回路を工夫すれば制御できる機器は増やせます。
GPOI1系列の回路図
<参考資料> 東芝デバイス&ストレージ株式会社
(*1)フォトカプラーの使い方 入力電流 https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/chap5/chap5-14.html
(*2)フォトカプラーの特性 変換効率 https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/chap5/chap5-10.html
どのくらい大きなものが制御できるのか
回路図でJ3のRelay Power Outputにどのくらいの電流を流せるかで制御できる機器が決まります。
1つ目の制約としてはJ2につなげる電源の大きさです。少なくともこれは制御できる機器の消費電力を上回ってなければなりません。
2つ目はフォトリレーに流すことができる電流です。TLP222Aはオン電流が最大500mAで、制御する機器はこれ以下でなければなりません。
電磁バルブの例 SMC VDWシリーズ
私が制御対象とした電磁バルブSMC VDWシリーズは消費電力が3W以下なので、24Vの電圧の場合125mAという計算になりますので動かせます。ちなみにTLP222Aと同じシリーズの廉価版でTLP222Gがありますが、これはオン電流が最大120mAですので動かせないかもしれません。(外観はほぼ同じデザインなので、印刷をよく確認しないといけない)
左のTLP222Aは、オン電流が最大500mA、右のTLP222Gは120mA。値段は秋月電子通商で、TLP222Aが100円、Gが60円。ちなみに東芝のサイトではTLP222は生産中止になっていて、TLP240シリーズを推奨していますが、値段が高いです。ネットにはまだTLP222が出てますのでこちらを選択したほうがよさそうです。
<メーカー製品情報>
安全対策① 逆起電力
自作した回路やRaspiを壊さないように保護する必要があります。電磁バルブや接点式のリレーは駆動するのにコイルを使います。コイルは電源オンからオフに切り替えた時に逆方向の起電力が発生します。つまりGNDが電源線よりも電位が高くなるということです。場合によっては電子機器を壊す可能性があります。そのために逆起電力を逃がす仕組みが必要です。
回路図のD1は整流用のダイオードです。GND側と電源側の電圧が逆転したときに電流が流れて制御側の回路に逆の電圧がかからないようのするためのものです。通常は電流は流れません。
このダイオードを組み込んだ電磁バルブやリレーもあります。しかし、この整流用ダイオードは20本で100円ぐらいのものなので、回路に取り付けておいた方が電磁バルブやリレーの選択の幅が広がり、結果的にコスト節約になると思います。
安全対策② フォトリレーのメリット
MOSFETと比べてフォトリレーを使用するメリットは、入力側と出力側の回路を分離できることです。回路図のフォトリレーを見てもらえばわかるように、入力側から出力側へはLEDの光で信号を伝えるので回路が分離できるのです。そのためRaspiのGPIOに外部ノイズなど影響を出さないようにできます。
出力側の配線は電磁バルブやリレーの設置位置まで配線を延ばす必要がありますので、雷などの影響が心配になりますので、フォトリレーで回路を分けておけば安心です。
もっと大きな電流を流す
フォトリレーや汎用のリレーモジュールでは、大きな電力が必要なポンプやモーターを直接制御することはできません。そのためには、下の図のようにパワーリレーを接続すれば可能です。J3とJ4を接続しK1のパワリレーを駆動します。J5からJ6の回路は100Vや200Vの交流も流せます。ただし、この配線は電気工事士の資格が必要ですので、ちゃんと業者に頼みましょう。
MYリレー、LYリレーの操作コイル側の定格電流は24Vの入力で37mA程度ですので、TLP222Aで十分動かせる計算です。また、MYリレー、LYリレーにはたくさんのバリエーションがあり、例えばMY4は4つの回路を一度に開閉できますし、信号が切れてもオン/オフの状態を保持するラッチングリレーなどもあります。これらを組み合わせればいろいろな制御の仕方が設計できそうです。
パワーリレーを接続した回路図
<メーカー製品情報>
*「UECS Pi」はアルスプラウト株式会社が提供する汎用DIY環境制御ソフトウェアです。https://www.arsprout.co.jp/products/others/uecs-pi/
*「UECS」は農業用のセンサー機器や制御機器用の通信・動作の共通仕様です。UECS研究会が公開しています。https://www.uecs.jp/outline/outline-index
関連リンク:EzITコンサルティング www.ezitc.dev
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