UECS Piで肥料管理機を作る③ 肥料追加制御、水位センサー
今回は、肥料追加制御の方法についてです。肥料管理機のポンプはなかなか高価で、自作派の懐には厳しいものがあります。肥料タンクの残少を検知するセンサーもメーカー品を購入すると高価になります。割り切るところは割り切ってコスト削減できないか考えてみます。
追肥装置 簡易型
ポンプを使わなくても重力による自然落下で肥料を水槽に流し込めないでしょうか。図のように肥料タンクを水槽よりも高い位置に設置して、バルブを開閉すれ肥料追加を制御できるはずです。正確な量は測れませんが、EC値を測定しながら少しづつ追加してあげればある程度の範囲で制御できるはずです。実際にやってみるとタンクの水位の高低で流れ出る水の量が少し変わります。正確にはできないけど、コストを抑えて作りたい場合には選択肢になると思います。
簡易型追肥装置
簡易型だと電磁バルブは2千円ぐらいで購入できるので、ポンプに比べコスト削減になります。電磁バルブは水用のものを使用する必要があります。また、pHアップ剤、ダウン剤を流す場合は薬品用のバルブを使用すないとバルブの中が腐食する可能性があります。
水用の電磁バルブ
左と中央が肥料用の電磁バルブ。ワンタッチ継手でチューブを取り付ける。右が薬品用の電磁バルブ。内部がシールドされている。口径が小さいので流量は少なくなると思う。
追肥装置 定量ポンプ
肥料タンクから液肥を吸い上げる必要があるまたは追肥量を正確に制御したい場合は、お金がかかっても電磁定量ポンプを利用する方がよいでしょう。
例えばイワキの電磁定量ポンプは上記のように信号入力用の端子から運転/停止を制御できます。(ポンプの100V電源を入り切りするという方法は、ポンプを壊すかもしれないのでやめた方がいい)
回路も⑤と⑥を開閉するだけなので、フォトカプラを使えば運転・停止を制御できるはずです。(ポンプを購入してテストしたらまた報告したいと思います)
このポンプは吐出量を設定で制御できるので、正確に追肥量を管理したい場合にも役立つはずです。もっと正確に吐出量を管理したい場合は、EXT信号でポンプを1ストロークずつ動かすこともできるので、プログラミングすればできるでしょう。
水位センサー
肥料タンクの補充タイミングをはかったり、追肥ポンプの空回りを防ぐためには水位センサーを付けて、タンク水位の残少を検知すると方法があります。
下の写真は機械式の水位センサーでネットで1000円程度で買えます。仕組みは単純で水位で浮きを動かしスイッチをオンオフするので、電源を与えてRaspberry PiのGPIOに入力すれば、オンなのかオフなのか検知出来ます。
水位センサー(フロートスイッチ)
タンクに横から穴をあけて取付できるので、計測したい水位に取付できる。浮きを上にして取り付けるか下にするかでノーマルオンとノーマルオフの両方に対応できる。(なるほどと感心した)
電圧によってGPIOでオンオフを検知するときの注意点としては、
- GPIOの電圧範囲に抑えること。オンの時でも3.3V以下になるように抵抗で分圧する。
- 不定とならないようにプルアップまたはプルダウンを行う。
- スイッチが短時間にオン/オフする(バウンス)状況の対策をする。
1と2は下記のような回路を組めば同時に対策できます。電源は5Vで入力されていますが、スイッチがオン(閉じ)の時20KΩの抵抗器で3Vまで電圧が下げられ、GPIOでは3.3Vで認識します。オフの時は、30KΩの抵抗を介してGNDに接続されるので0Vになります。(プルダウンという) プルアップ/プルダウンはRaspberry Piの内部でも設定で行うことができますが、Raspbery Pi内部の抵抗値を意識しないといけません。
3についてですが、スイッチは接点に近い付近で短時間に何度もオンオフをしています。それが水面であれば波の影響で何度も繰り返すことがあるわけです。これは余計なCPUを食ってしまう可能性もあるわけで、一定時間たたないとオン/オフの変化を認識しないような仕組みが必要です。(デバウンス処理) ソフトウエアではUECS Piのセンサ設定[DIN]画面でDEBOUNCEの設定ができます。ハードウエアでも抵抗器とキャパシタ(コンデンサ)で簡単なものは作れます。
機械式の水位センサーは、取付と漏れ防止のパッキンの工作作業は手間がかかるかもしれません。腐食対策のため、樹脂製のものを使用する方がよいでしょう。
最近見つけたのですが、静電容量の変化で水面を検知するセンサーがあります。これだと容器の外から検知できるので工作も楽だし、漏れや腐食の心配もありません。入手して試してみたいと思ってます。
終わりに
3回にわたって肥料管理機の自作について書きました。一部はまだ本番での使用実績がないものですが、技術的には稼働するはずのものです。今後、本番で使用する機会を見つけて実績を積んだら報告させていただきます。
自作による肥料管理機のメリット、デメリットをまとめてみます。
<メリット>
- 費用削減。自作では高く見積もっても15万円以内ではできると思いますので肥料管理機を購入するのに比べて20万円以上は節約できると思います。
- リモート設定・詳細データの収集ができる。UECS Piでセンシングから制御まで行えば、制御設定がリモートからできたり、センサーで集めた情報や制御の実績が記録できます。
<デメリット>
- 正確性については、ある程度妥協する必要があります。例えば簡易型の電磁バルブによる追肥を行った場合には、追加した肥料の量を正確に測ることはむつかしいと思います。
- 運用実績が少ない。本番で運用しなければわからない点はあると思います。肥料管理機はメーカーの運用経験をもとに長年改善されているはずですので、安心して使いたい方はメーカーから購入したほうがよいと思います。
*「UECS Pi」はアルスプラウト株式会社が提供する汎用DIY環境制御ソフトウェアです。https://www.arsprout.co.jp/products/others/uecs-pi/
*「UECS」は農業用のセンサー機器や制御機器用の通信・動作の共通仕様です。UECS研究会が公開しています。https://www.uecs.jp/outline/outline-index
関連リンク:EzITコンサルティング www.ezitc.dev
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