電子回路自作のHint&TipsーAC100VでLEDを点灯させる

 電子回路を自作するとき、表示灯としてLEDをよく使います。DC24V程度であるなら適当な抵抗を直列に入れればLEDを点灯させることができます。しかし交流100VでLEDを表示灯としたい場合は注意が必要です。単に抵抗を直列に入れるだけでは抵抗の消費電力が大きくなり定格電力をオーバーして高熱になります。(AC100Vに抵抗を直接接続したことがないので、燃えるのか破裂するのかわからない)

AC100V用のLED表示灯も販売されていますが、表示板に穴をあけて取り付けるタイプのもので、プリント基板で使用するには大きすぎます。
AC100VでLEDを点灯させる実験の記事をネットで見つけたので実験してみました。

(参考記事)
LEDナツメ電球の仕組みを使ったものですが、理屈もちゃんと説明しているので一読お勧めします。

回路図

下の図が実験に使用した回路図です。LED D1は普通の3mmとか5mmのLEDで、逆耐圧は5V程度です。必要な電流も10mA程度。当然直接AC100Vにつなぐわけにはいきません。100Vを5V以下まで落とす必要があります。
使用する抵抗はよくあるカーボン抵抗器で1W以下の消費電力です。抵抗は電気を熱に変換して電圧を下げるので抵抗だけでは十分に電圧を下げることはできません。そのためにコンデンサC1で電圧を下げてやります。コンデンサは交流に接続すると充放電により、電源とは周期がずれた起電力が発生するので抵抗(リアクタンス)が発生します。(周期がずれた起電力で電源にカウンターパンチを与えるイメージ) コンデンサのリアクタンスは消費電力が0(力率が0)で熱が発生しません。つまりコンデンサで効率よく電圧を下げようという仕組みです。
実験に使用した回路

回路図の説明は参考のブログにも書いてますが、実験結果と合わせて補足しておきます。

コンデンサC1(主役)と抵抗R1

このコンデンサが交流の電流を制限します。交流抵抗Z(リアクタンス)は下記の式で計算できます。
 Z = 1/(2πfC)  πは円周率のパイ、fは周波数

参考ブログでは、C1は0.47uFで50Hzの交流電源を使ってるので、Zは6.8KΩ、流れる電流は15mAになります。私の地域(西日本)では60Hzなのでそれぞれ5.7KΩ、17.7mAの計算になります。(以下、特に断らない限り周波数は60Hz)  標準的な3mmのLEDの標準電流は20mA程度で、そんなに明るくしたいわけではないのでもう少し押さえます。
計算式からわかるようにコンデンサの容量を減らすと抵抗値は上がり、電流は減ります。C1を0.22uFにするとZは12.1KΩ、電流は8.3mAの計算で、この電流でもLEDを点灯させるには十分です。
抵抗R1は電源が切れたときにコンデンサにたまっている電流を放電させるためのものです。

抵抗R2 サージ対策、大きすぎると熱を持つ

参考ブログには「突入電流を制限する」と説明されています。C1とR2はモーターやリレーのコイルで電源を入り切りしたときに発生するサージ(高電圧で電源の3倍とかになる)の対策回路のような役割になります。目安としては
 コンデンサ:接点電流1Aに対し0.5~1(μF)
 抵抗:接点電圧1Vに対し0.5~1(Ω)
(参考)パナソニック リレ-コイルのサ-ジ保護について-1 

 R1は大きいほうがよさそうですが、大きすぎると抵抗器の定格電力を超えて非常に熱くなります。最初にテストしたときC1が0.47uFで(電流を減らす目的で)R2を10KΩにしましたが、1/2Wの抵抗R2がかなり熱くなりました。電流は8.6mAになりますが消費電力を計算すると0.7Wになり定格オーバーです。電流を抑えるにはコンデンサの容量を減らす必要があるということですね。

C1が0.22uFでR2は1KΩのとき消費電力は0.07Wとなるので、1KΩ以下が妥当なようです。サージ対策としてはAC100V電源には100Ωとか200Ω程度でよさそうです。

抵抗R3 ダイオードの保護

R3はここで回路が解放された(切れた)場合に100Vの電圧がかかるので、それを下げる役割をします。通常のLEDは1方向しか電流が流れないので、AC100Vの場合、逆方向に100Vの電圧がかかることになります。LEDの逆耐圧は5Vなので、実際にR3がない状態でLEDを点灯させると10秒ぐらいでLEDがお釈迦になります。(壊れるという意味)
計算としては、回路全体の抵抗値とR3で100Vが分圧されると考えればよいわけです。
R3を0.5Ωとしたとき、C1が0.22uFの時のZが12.1KΩ、R2が1KΩの総和が回路全体の抵抗で13.6KΩとなります。電圧は100V×0.5/13.6で3.7Vとなります。実際に図ってみると4.3Vで5V以下に収まります。

さきほど「通常のLED」と書いたのは、実は2つのLEDを正逆の方向にして1つのパッケージにした無極性LED(Dual Bidirectional)なるものがあります。これだと逆耐圧を考慮しなくてもいいのでR3は不要ということになります。(LEDが切れたときに100Vの電圧がかかる不安はありますが)

点灯テストの様子

左から①通常の(1方向)3mmLED C1は0.47uF ②無極性LED(5mm) C1は0.47uF ③同0,22uF ④同0.1uF
無極性のほうが交流の両方向で点灯するので明るい。値段は①通常のLEDと変わらない。

実際の回路設計

今、AC100Vでリレーを駆動させる基板を設計中で、今回のテスト結果から実際の回路設計を考えてみます。LEDはオンにリレーをオンにするときに点灯する表示灯です。それとリレーのオンオフで発生するサージ対策にもなることを期待しています。今回はG7L-1A-B AC100/120という大容量のパワーリレーでAC100Vで駆動させます。ACなのでサージ対策としてはダイオードでなくCR回路になります。
設計中の回路の概念図

C1は0.22uF。LEDを光らせるのにも十分な電流にできるし、リレーコイルのサージ対策としても十分です。リレーコイルの電流は20mA程度です。
R1は省略します。リレーのコイルがつながってるのでスイッチオフのときに放電されると思います。(それに、起こるかどうかわかりませんが、コンデンサが導通しなくなったとき、R1は高熱になるんじゃないかと心配になって、ないほうがリスクが少ないかと思いました)
R2はサージ対策を考慮し電源電圧が100Vなので100Ωか200Ωでよいかと思います。
R3は無極性LEDなら不要ですが、場合によっては普通のLEDを使うこともあるかもしれないので残しました。
ちなみに抵抗は念のためすべて定格1Wのものを使用することを考えていますが、1Wの抵抗器は1/2Wや1/4Wの抵抗器よりも大きく、12mmのピッチにしないといけないので基板設計には考慮が必要です。入らなければ1/2Wに変えようと思ってます。

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